旅のおわり世界のはじまり
「みなさーん、こんにちわー。私は今、ウズベキスタン共和国に来ています」
テアトル系の映画を見るたびに流れる予告だ。
何度も聞いたそのセリフは、自然と頭に残った。
『旅のおわり世界のはじまり』
前田敦子演じる歌手を夢見るTVレポーターの葉子が、番組の取材でウズベキスタン共和国に訪れる物語。
居るはずのない魚を延々と探したり、炊けてないパリパリの米を食べて美味しいと言ったり、苦手なアクロバティックに挑戦させらりたり、それでも文句を言わずにレポートを続けるが取れ高は一向に増えない。
撮影クルーのストレスも溜まる中、自分のやりたい事とはどんどん離れて行くと思い悩む葉子。
さらに滞在が長引き、深夜の街で一人になったり、路地裏に入り込んだり何か起こるのではないかとハラハラさせられてしまう。
この映画の中で、葉子は一人で居る時、常に走り回っている。
誰かに話しかけられると聞く耳を持たずNOと言い切る。
物語の終盤、迷子になった葉子は警察に保護される。
さらには日本で大火災が起き、消防士の彼氏と連絡が取れなくなる。
途方にくれる葉子に、ウズベキスタンの人々は優しく接してくれる。
「あなたは私たちの何を知っている」「話をしなければ分かり合えない」
葉子を保護しようと必死に探し回った警察が言ったセリフだ。
ここで葉子は、ついにウズベキスタンの人を理解しようとする。
僕はこれまで、葉子の行動は海外へ行ったら当然の対応だと思い込んでいた。
海外と聞くと治安の悪さがどうしても気になってしまう。
夜に出歩くだけでなにか犯罪に巻き込まれるのではと周囲の人間を疑ってかかる。
しかし、それは相手のことを何も知らない僕の勝手な想像にすぎないのである。
何も知らず、敵だと決めつける。なんて愚かなのだろうと思い知らされた。
勿論、疑ってかかるのは悪いことではない。
むしろ、それくらいの心意気であるべきだ。
しかし、本質を見失ってはいけないと知ることができた。
それからのウズベキスタンの風景は少しだけ違ってみえた。
僕は今日、ウズベキスタン共和国を旅した。